水野靖弘さんが【寺活】住民こそ文化の担い手 寺活が結ぶ 伝統工芸 音楽 まち 外国人 若者 歴史

コンサート

 新幹線時代を迎え、まちをいきいきさせるものは何か。金沢市寺町の天台真盛宗西方寺であった演奏会から考えてみたい。伝統工芸の技を生かした本堂では、金沢で育った若手音楽家が奏でるコントラバスとハープの音色が、集まった百三十人を優しく包み込んだ。

 「この曲を作ったバッハ(一六八五~一七五〇年)が生まれる少し前に、このお寺は金沢に移ってきたのですね」。大きなコントラバスを手にした岡本敬太さん(26)が、本堂に陣取った人々に語りかけた。水を向けられた田畑智樹住職(48)が「本山は室町時代の終わりに福井で開山し、一五八三年に加賀藩祖前田利家公の金沢入城とともに金沢に移ってきました」と説明した。

 バロック音楽と金沢のまち、西方寺がたちまち結び付けられ、場がなごむ。

 ハープ奏者の水野靖弘さん(28)は、高さ二メートルのハープにペダルがあることを伝え「演奏する白鳥(サンサーンス)みたいに、見えない部分で足をばたばたしています」と話し掛けた。

 西方寺が催した「寺活 お寺でプチコンサート」。金沢市生まれの岡本さんはNHK交響楽団で最も若い楽団員の一人。平尾さんはオランダでの留学経験があり、金沢を中心に広く活動している。二人は邦楽の定番「春の海」、アニメ映画「千と千尋の神隠し」の「いつも何度でも」などを演奏。平尾さんが「引き潮」(マクスウェル)をソロで奏でれば、岡本さんがコンバスで名曲を響かせた。

 部活動でコンバスを担当する遊学館高校一年の女子生徒(16)と金沢市額中学校二年の女子生徒(14)は「こんなに近くで手首の使い方を見られて、いい体験になった」「コンバスがこんなに目立つ楽器だと思わなかった」と笑みを浮かべた。

 日本文化海外普及協会県支部が英文ちらしを配ったためか、外国人の聴衆も。寺と縁遠かった人たちが姿を見せ、活気にあふれた。

 岡本さんと平尾さんは、二〇〇八年の北陸新人登竜門コンサートの優秀者。オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)と共演し、世界に羽ばたきつつある。登竜門コンサートは石川県音楽文化振興事業団が催し、これまで五十人余りの若手を発掘し、育てている。

 プチコンサートは、寺町を活性化させようと地元七寺院の三十~五十代の住職らでつくる「寺町台寺活協議会」が後押し。天井に金箔(きんぱく)、彫刻を施すなど本堂を改修した西方寺が日本文化海外普及協会県支部の提案に応じた。

 寺町台は、住民らが高齢化し、商店も少なくなりつつある。だからこそ、若い音楽家が参加して歴史あるまちに命を吹き込む試みが面白い。その音楽家らも地元で育てられた。田畑住職があいさつで語った「すてきな音楽は心を一つにしてくれる」が印象的だった。北陸新幹線が十四日に開業したが、文化を磨き、育てるのは私たち住民であることに変わりはない。(沢井秀和)